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境界線(きょうかいせん)
バウンダリーとも言います
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対人関係でモヤモヤしたり、嫌な気持ちになったりするときは、ほとんど『境界線の問題』が起きています。
恋愛では特に境界線があやふやになりやすいため、トラブル発生の元となるんです。
ということで今回は、境界線がどれだけ恋愛と深く結びついているのかを取り上げます。
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①境界線とはどんなものか
②なぜ境界線があいまいになるのか
③ではどうしたらよいのか
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の3本立てで進めますね。
1境界線ってなあに?
心理用語である『境界線』とは、『自分と他人の領域』を区別する線。
家族やパートナーであっても他人というのがポイントなんですよ。
あなたに境界線があるように、彼にもあります。
おおっ、こんな線があるなんて思いもよらなかったというあなた。恋愛がいい具合に進んでいくチャンスです。
えっ、彼と私の間には境界線があるの?さびしい……としょんぼりとしたあなた。自分を大切にしながら、彼も大切にできる関係を作っていくグッドタイミングが来ました。
自分に自信がない、自分のことが嫌い、でも何とかしたいと願っているあなた。私はそのような方にこそ、境界線を意識して自分の領域の地固めをしていってほしいと思っています。何のために?それはあなたの幸せのために、です。
①境界線をイメージしてみよう
自分の家と隣の家には境界線がありますよね。
ブロックだったり、生垣だったり、塀だったり。で、お隣の人が境界を乗り越えて勝手に自分の庭に入り、花を摘んでいこうとしたら……
ドロボー!と怒りがわきませんか?
それと同じことが人と人の間でも起こるということ。
やっかいなのは、塀と違って人と人の間にある境界線は目に見えないのでわかりづらい。入られた、入ってしまった、と自覚するのが難しいんです。できるだけわかりやすく説明していきますね。
あなたが感じたり考えることに対して「そんなことは被害妄想じゃん」と相手が決めつけたとしたら、相手は境界線を飛び越えてあなたの領域にズカズカと侵入したことになります。
自分の感じ方を決めるのはあなた自身です。
そこに他人の経験から来る考えを、いかにも正しいように押しつけられると、どこからどこまでが自分なのかがわからなくなってしまいます。
これが境界線の怖さです。
②境界線の中にあるもの
自分の境界線の中には
・感情・考え・行動・時間・身体・お金・性
などがあります。
自分に属するものは、すべて自分で自由に決めることができます。同時に責任も生じます。
例えば「性」をセックスととらえたとき、する・しないは自分で決めることができるのであって、結婚しているからしなければならないものではありません。
大事なのは二人でどうしていくのか話し合いができる状態でしょう。
余談ですが、カウンセリングが進むにつれて彼といい関係になっていった方々は、「話し合いができるようになったことが新鮮」「彼との関係性を楽しめる」とおっしゃいます。
おそらく、境界線を意識して自分の領域を大切に守ることで、相手にも相手の大切な領域があることに気づき、尊重しはじめたからでしょう。
自分は自分。相手は相手。違うからこそ話し合う。と、いい具合に循環していくなぁ…と実感しています。
しつこいようですけど、境界線はと~っても大事な線です。境界線の中にある『自由』と『責任』は、恋愛だけでなく、他の人間関係においても最重要項目。
この重要性がわからないと、真夏の炎天下「ワシはのどが乾かんからの~」とつぶやいているうちに脱水症状で倒れるおじいちゃんと同じく、恋愛でも倒れます。おじいちゃんに必要なのはポカリ、あなたには境界線です。お互いの領域を分ける線引きをいつも意識してくださいね。
では次に、境界線があやふやになっている例を挙げてみましょう。
③もろい境界線の例
感情
彼の問題で落ち込んだあなたに対して、友達が「気にしすぎだよ」と言われてモヤモヤする。→悲しかったり不安になったりする感情はあなたのもの。『自由』に感じましょう。
トラウマがある人は、ここまでは感じるけれど、これ以上はやめよう、といいう感覚も持ってくださいね。そうやって自分の身は自分で守る選択ができると、生きやすさにつながります。
考え
あなたはどんな考えを持ってもいいですし、自分の考えを『自由』に表現していいんです。ただし、表現した後は責任がともないます。
行動/時間/お金
自分の自由になる時間には、好きなことをして楽しむのが健康的。自分のお金は『自由』に使えます。同居している人がいる場合は話し合いも必要ですけどね。
お金を使うときには『責任』がともないます。借金をし続ける相手に対して「私だけが彼を救えるの」と思い込むケースでは、お金の責任の境界線があいまいになっています。
身体
身体の境界線はとても分かりやすくて、他人と自分を分けるものは皮膚になります。知らない人がいきなりあなたの手にさわったら、いや~な感じがするでしょう。それがあなたの領域を侵害された証です。
とても残念なことに、育ってきた家庭環境で身体的な虐待を受けた子どもは、大人になってから自分の身(領域)を自分で守ることが困難なケースが多く、そのようなお話を聞くたびに私は苦しい気持ちになります。
④境界線に侵入する人、される人
共依存のカップルに多いセリフですね。彼の言葉にモヤッとしたら、それは責任の境界線があいまいになっています。
「オレがこうなったのはオレの責任」であり、決してオマエ(あなた)の責任ではありません。彼はもう子どもではありません。彼の行動は彼が選んだものですし、その結果は彼が責任をもって受け止めるのが健康的な考え方。
「ああ、やっぱり私が悪かったんだ…、もっと尽くさないと…」と思うことが多い方は、完全に相手の領域に入っています。そこに気がついてくださいね。
また、考えの境界線があいまいだと、相手の考えを先読みしたり、相手の言ったことに対して勝手に意味をつけたりします。このときあなたは彼の考えの領域に入り込んでいるんです。
境界線がないと人間関係が破綻します。入っていく方はもっともっとと侵入に際限がなくなるし、入られる方は依存やコントロール感により、胃にコールタールをべっとりと塗られた気分になるものです。
自分も相手も疲れ切ってしまうので、怖いなぁ…とつくづく思います。
ちなみに、DVは境界線侵入の典型例です。相手に対する精神的な攻撃(感情の境界線への侵入)、暴力(身体的な境界線への侵入)、パートナーへの行動制限(行動の境界線への侵入)、「オレが暴力をふるうのはオマエが悪いからだ!」といったセリフ(責任の境界線への侵入)
こんなふうに境界線を中心に考えると、対人関係において自分に何が起きているのか、頭の中が整理されていきますね。
⑤境界線がないとどんなことが起こるのか
- 自分の時間/空間が確保できなくなる
- いつも相手の都合に合わせてしまう
- 本当はやりたくないのにYESと言ってしまう
- 侮辱された感じがする
- 息苦しさを感じる
- どんなに頑張っても報われない感覚に陥る
- 自分がどう感じるか/考えるかに自信がなくなる
ひと言でいうとモヤモヤが起こります。うまく言葉で表現できないような割り切れない感覚が起きたら、入っているか入られていると意識してみてくださいね。
境界線がもろい理由
境界線がもろい原因はさまざまな要因がありますが、家庭環境や社会的な環境が主な理由でしょう。
家庭環境
- 両親のもろい境界線(関係性)を学習してしまったケース。
- 親から罪悪感を植え付けられるような接し方をされてきたケース。
- 自分の考えや感情よりも、関心がいつも親に向いていたケース。
- 親の愚痴を聞かされて育ったケース。
小さなころから自分の本当の気持ちを飲み込んでばかりいたとしたら、自分の領域の中にある感情や思考、行動に自信が持てなくなるでしょう。当然、境界線はもろくなります。
親が「あなたのためを思って」が口癖で、子どもであるあなたの選択を無視してばかりだったとしたら、あなたは境界線を守るのが難しい大人になっているでしょう。
「親である私の言うとおりのことをやっていればいいの」「私は大人だから何でも知っているんだ」「私の言うことを聞きなさい」といったメッセージを絶えずあびせている親がいるとしたら、子どもが成長して大人になってから、自分で生き抜いていく可能性を奪うことになります。
私(親)の言うとおりにすると、私(親)が安心なのであって、「あなたのため」というのは、とても卑怯な感じがします。言っている親自身は気がついていないかもしれませんが。
子どものためだったら、何が起きているのか、何をしたいのか、どうしていこうかと一緒になって考え、見守ることが愛情深い親の姿勢だと私は思うのですが、みなさんはどう思いますか?
社会的な環境
日本は「和」が基本の社会です。学校でも社会人になっても自分の主張をハッキリと口にすると周囲から白い目で見られることがありますよね。
周囲と同じでないと落ち着かない気持ちになることも多いでしょう。相手に合わせるのが美徳といった風潮もまだまだありますね。
ここまで境界線、境界線と口を酸っぱくして言ってきましたが、「私にも当てはまる…。でも、どうしたらいいんだろう……」と暗い気持ちになった方に向けて、私から対処法をお伝えしていきます。
境界線のもろい人はどうしたらいいの?
①客観性
境界線に入った、入られた、と自覚することが第一歩。気づくたびに「入ったね」「入られたね」と自分に言ってみましょう。
どのような状況で境界線がもろくなりやすいかを、ノートに記録するのもいいですね。そのとき考えたことやどんな行動をしたかも合わせて書くと、自分のパターンが浮き彫りになってきますよ。
ということで、まずは自分自身を客観的にながめるところから始めましょう。客観性って、悩みにどっぷりと浸かっている人が変化していくためのキーワードなんです。
ミカさん! 境界線は最重要項目で記録も大事、客観性はキーワードって、一体どういうことなんですかッ?混乱しちゃいました!という声が聞こえてきそうですが、どれも大事です。
していえば、記録と客観性は同じカテゴリーなので、境界線を意識しつつ、堂々巡りをしている自分が出たら「ちょっと待った」と一呼吸おいて「ねえ、自分いつも同じことしてないかい?」と少しだけ冷静になってくださいな。
②主語は「私」に
境界線がもろい人は主語があいまいになりがちです。私は何をしたいのか、私はどう感じるか、などをぜひ意識してみてください。
これも考えるだけでなく、ノートに書いていくことが練習になります。
最終的には相手に伝えられるようになると理想的ですね。恋愛が楽しくなりますから。
主語に関してもひとこと。
「みんな○○だ」「私もそうならなきゃいけない」という口癖がありますが……
その「みんな」って誰ですか?
主語をAさん、Bさん、といった具合に特定すると、頭の中で考えていた「みんな」が、実はみんなではなかったことに気がつくでしょう。そして「私は○○だ」「私は○○と思う」と、全体の中にうずまっていた自分を個として分ける練習をしていきましょうか。境界線の意識が高まりますよ。
③責任の所在を明確に
境界線は責任の区別なので、モヤっとしたら、こんな言葉を口にしてください。
その責任は誰が負うこと?
それはだれの問題?
④NOと言う
境界線がもろい人にとってはかなりハードルが高く感じるかもしれませんが、NOと言えるようになると、相手に巻き込まれなくなります。
NOは拒絶ではなくて、「私とあなたは違う考えを持った人間なんですよ」と、違いを明確にしているだけ。違うって、その人らしさを感じられて素敵だと思いませんか?
話し合いも、お互いに歩み寄るのも、まずはNOから始まるんじゃないのかな。
まとめ
まあ、境界線を引く作業は、一に練習二に練習です。やって失敗するのはよくあることなので、はじめのうちはやったことに対して「よくやったね」と自分を励ましてくださいね。
いままでやったことのない状態は、抵抗も大きいでしょう。だからこそ、やってみる価値はあると私は思いますよ。
でないと、このような状態になるでしょう。身に覚えのある私です。
かつての私に伝えたい。境界線がどれだけ大事なことかを。だからせめて恋愛で苦しんでいる人には、この記事が届くといいな……と思って書きました。
苦しい気持ちで恋愛を続ける人へ
「楽しいはずの恋愛が苦しい…」が起きたら、
境界線がない➡責任の区別があいまい➡自由を感じられない➡自分らしさの喪失➡苦しい
の図式が成り立っていることを思い出してくださいね。
私はあなたに、小さくてもあたたかな幸せを感じてほしいです。
ミカ